NO10-窓を叩く

実家は怪異の多く起こる家であった。
霊感体質の知人に言わせれば、実家の裏の家が元凶で、その影響を受け、更に西側には霊道が通っているらしい。それを信じたのは、以下のような体験をしたからである。

東京から埼玉に引越しをしたのだが、そもそも家が新しい割に安かった。注文建築にも関わらず、前の持ち主はわずか一年半でこの家を売りに出したぐらいである。

引越しして最初に迎えた朝のこと。
まだ家の中が全く片付いていなかったので、五人家族全員が同じ部屋に揃って眠っていた。 二階の、ベランダのある部屋である。

朝方、激しい音で目が覚めた。ベランダの外側から、誰かが激しくガラス戸を叩いているのである。 東側の部屋だったので、朝日がまぶしくベランダの方を直視できない。おまけに眠い。他の家族は誰も起きないし、私も「どうでもいいや」と眠ってしまった。

誰が、二階のベランダにいたのだろうか。

それからも、誰も使っていない風呂場が荒らされたり、トイレであらぬ方向からノックされたり(音のした方は階段下や庭)、階段を駆け下りてくる足音がしたり、室内犬が誰もいない方向に向かって吠えたりと、様々なことがあった。

が、ウチの家族は呑気で、姉以外は殆ど気にしていなかった。
ある日、姉がこう言った。

「最近、あんたの部屋をノックしてる音がするよ。・・・夜中に」

私は何も聞いていない。聞こえていない。パシンパシンと弾ける様な音がベッドの周りを一周したことがあったが、これもまた、あまり気にしていなかった。

更に数年が過ぎ、その日は体育祭で、いつもより早く登校しなければならなかった。 目覚まし時計を早めにセットしたが、時間になって時計が鳴っても二度寝してしまったのである。

うつらうつらとしていたら、突然、外側から窓を激しく叩かれた。 窓際にベッドがあったので、私は文字通り飛び起きた。おかげで遅刻せずにすんだが、窓を叩いたのは誰だったのだろう。

また、部屋の壁に子供の手形があって気味が悪かったので、尾崎豊のポスターで隠した。実家を出る際に剥がしたら、手形は消えていた。

引越しして6年ほどたつと、怪異はぱったりとやんだ。霊道は移動するというし、元凶である裏の家に何か変化があったのかも知れない。

現在、実家はまた引っ越して、その家には別の人が住んでいる。

投稿者 川田卓人さん 性別: 秘密 年齢: 心は22歳のまま 人種: 月憑きマシーン

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