NO33-『ドア』 |
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もう10年くらい前の話です。 高校の先輩が 「見せたい物がある」 と言って私と友人のSちゃん を自分の家に呼んだんです。 見せたい物って何だろう、とそのときはわくわくしていました。それがなんなのか知るよしもなく。 先輩はなぜか青ざめた表情をしてました。机の引き出しから取り出してきたのは綺麗な幾何学模様のようなパッケージのケースに入ったビデオテープでした。 再生するとザー・・・という砂嵐が10秒くらい流れた後に”それ”は現れました。 CGで描かれたドアです。ぴったりと閉まったドアが黒い背景の中にぽつんと浮かんでいる画面が特に動きもなく延々と続く、よくわからないビデオでした。3分くらいその状態が続いて、後はまた砂嵐でした。 先輩はテレビを消すと私とSちゃんに訊ねました。 「何が見えた?」と。 変なこと訊くなあと思いましたが、私の見た通りを伝えました。 「そのドアは開いてた?しまってた?」 もう一度言いますが私には確かに閉まっているドアが見えたのです。 ですが、Sちゃんは私の言葉にとまどったようにいました。 「え?ドアあいてたじゃない。」 Sちゃんにはそのドアはまるでだれかがこちらをのぞいているように隙間が空いていた様に見えたというのです。それを聞いた先輩の泣きそうな笑顔は今でも忘れられません。 そしてこう告げたのです。 「私には、ドアは全部開いてるように見えるの」 ・・・先輩の話によると、そのビデオは数年前学校で流行っていたという「ビデオドラッグ」という物だそうです。「ビデオドラッグ」というのは見るだけで疲れがとれたり、視力が回復したりするというもので、彼女は友達からそのビデオを借りたというのです。 最初は先輩にもドアが閉まっているように見えたとのことですが、繰り返し見るたびにどんどんドアが開いていったというのです。そんなことあり得るのでしょうか? もう一度ビデオを見て確かめたいと思うのですが先輩が交通事故で亡くなってからその死があのビデオと関係があるのではないかと思いSちゃんと二人で彼女の部屋を探してもあのビデオはどこにもありませんでした。 今ではふと思うのです。 あのドアはあの世につながっていたのではないかと。 それならどうやら私はSちゃんより長生きするようです・・・。 |
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投稿者 宝樹沙耶子さん 性別: 女 年齢: 20代後半の前半 人種:人間だと自分は信じていますが…
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