NO3-おかあちゃん・・・あんた・・・

私と私の母、友人と友人の母の4人で長野県に旅行に行ったときの事です。
山に登ったり、ご飯食べたりして疲れてすっかり皆眠っていたその夜のこと・・・。

夜の2時ぐらいでしょうか。ごそごそと音がして目が覚めてしまいました。母が起きてトイレに行った音で、「なーんだ」と思ってそのままベッドの中でうつらうつらしていました。が、壁のすぐ向こうがトイレなのでガタガタうるさくて眠れません。少々いらだっていましたが、その内済んだようなので安心して眠り始めました。だけど、母が一向にトイレから出てこないのです。

訝しがっているとその内、友人の母が起きてきて、「まだ出てこないの?あの人」とトイレに入ってみると母がいなくなってるのです。

とうとう友人も起き出し、友人の母が探しに行ってしまいました。

しばらくすると、友人の母と一緒に母が帰ってきました。
「どこ行ってたのさ」
と聞くと母はそれは不思議な話を語り出したのです。

母は寝ぼけていて自分がトイレに行ったこと等ちっとも覚えていませんでした。母が気がついたのは従業員用の寝室だったそうです。最初どこだかわからず、外に出てみると「プライベートルーム」と扉に書いてあったのでようやく自分が寝ぼけてこんな所まで来てしまったのだとわかり、急いで部屋に戻ろうとしたのだそうです。

しかし何処にいるかさっぱり解らずうろうろと歩いていたら、その内外に出てしまったのです。ホテルの中に戻ろうとすると夜中だというのに外をたくさんの人が走り回っているのです。

何故だろうと思いながらそのままホテルに入り、部屋に戻ろうと廊下を歩いているとある一室の扉が半開きになって中から人の声が聞こえてくるのです。

少し覗いてみるとそこには横たわった男の人とその人に縋り付いて泣いている女の人が見えたそうです。彼女は男の人に向かって「お父さーん!」と叫んでいます。気味が悪くなり、部屋へ戻るためエレベーターに乗ろうとしたところに探しに行っていた友人の母と会ったそうです。

「絶対嘘だ」と私は言いました。「寝ぼけてるんだ」と皆も言いました。

しかし母は「絶対見た。きっとあの人死にそうになって苦しんでいるんだ」ときっぱり云うのです。ならば確かめようという事になり、フロントの方へ出て行くとなんと救急車が来ており、男の人をちょうど運んでいくところだったのです。母の言うことは嘘ではなかったのです。

しかし、母の話には少し変な所があるのです。

それは「道」です。何故なら母は、『入り口から入ってそのまま真っ直ぐ行ったらあの部屋の前を通った。それからもまた真っ直ぐ進んでいってエレベーターに乗った』というのですが、母が見たその部屋は私たちの部屋とは反対方向なのです。そっち側へ行けば突き当りで、戻ってくるしか私たちの部屋へ来る事は出来ないのです。それなのに母は「絶対真っ直ぐ来た」というのです。

いくら寝ぼけているとはいえ、行き止まりなことぐらい解るはず。母曰く「私も職業柄ほっとけないところがあるんだけどねぇ。多分呼ばれたんだね。あの男の人に助けて欲しいって」だそうです。

母は看護婦をしていました。

投稿者  甲子郎さん 性別: 謎 年齢: 1.5 人種:: 灰色の受験生

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