僕には霊能力なんてものはありません。
だけど、人に言わせれば霊体験だと断定されるものがいくつかあります。
今日はその中でも、気味が悪くて訳の分からなかったものを一つ…。
夜の高架下、高架下と言っても、そこはトンネルのように少し長めの暗闇が待ち構えている場所でした。
家と学校の往復には、どうしても通る道ですが、その高架下は好きではありません。
特に、学校から家への帰路の高架下辺りは事故現場になっている場所が集中していて、事実、何度修復されても、すぐにわだちが出来てきて、バイク事故が多発するのも頷ける道路でした。
すでに日は落ちきり、辺りは暗闇です。
先程まで、周囲を走っていた車両はいつのまにか消え、交通量の多いはずの道を一人バイクで走るのは僕だけでした。
季節は秋で少し肌寒い思いをしながら、何処までも静かな道を一人進んでいた時です。
何かが右肘に触れました。
ぺったりと張り付くような生温かい感触です。
長袖のはずなのに、肘だけに訪れた奇妙なぬくもり…
自分のバイクの排ガスの温かさ?いえ、風の向き的に有り得ません。
周囲の車両の排ガス?周りには何もいません。
生温かい感触、コレをもし体験したいなら、手の温かい方の手のひらに触れるか触れないかのギリギリの位置に肘を置いてください。
その位、微妙な感触です。
とにかく、何か分からないまま、ひたすら道を走り、高架下を抜け去った瞬間、奇妙な感触が消え去りました。
と、同時に、同じ車線にも、対向にも車がいる事に気付きました。
驚きましたが、それ以外、特に何も起こらなかったので、不思議な話として食卓にのせて、体験は終わりを告げました。
オチになるかは分かりませんが、その後、死亡事故が高架下で起こったのを聞いた事はありません。
僕はといえば、2、3年経った今も、その道を一人で走る時は必ず、わだちが気になっても道の端を走るように心がけています。
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